症例報告
成人にみられた多発性回腸膜様狭窄症の1例
田中 雄一, 花岡 農夫, 工藤 保, 李 力行, 大内 慎一郎, 土屋 玲, 草野 智之, 瀬戸 泰士, 畑澤 千秋*
中通病院外科, 同 小児外科*
極めてまれな多発性回腸膜様狭窄症の1症例を報告した.
患者は63歳の男性.1989年3月に当院で直腸癌の手術を受けるまでは,腸閉塞の既往はなかった.術後のイレウスのため,1989年9月に再入院し,再開腹した.癒着剥離の際,回腸の近位側に膜様狭窄部が多発していることが偶然に判明した.膜様部の中心にはpin-holeから径10 mmの大きさの穴が1個あった.膜様物が集中していた回腸を50 cm切除し,端々吻合した.吻合前に空腸瘻と盲腸瘻のtubeを残存小腸内腔に挿入して抵抗なく通過できることを確認した.組織学的検査で膜様部には粘膜筋板が著明に肥厚している像が認められた.
成人の先天性小腸狭窄症は極めてまれで,我々が検索しえたかぎりでは,報告例は世界で6例のみであった.
索引用語
congenital ileal stenosis, multiple mucosal diaphragms, adult case
日消外会誌 27: 1108-1112, 1994
別刷請求先
田中 雄一 〒010 秋田市南通みその町3-15 中通病院外科
受理年月日
1994年1月12日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|