原著
ラット90%肝切除後肝再生の抑制に関する検討
安藤 克彦, 宮崎 勝, 伊藤 博, 海保 隆, 安蒜 聡, 中島 伸之
千葉大学医学部第1外科
切除限界を越えた肝切除後の病態を明らかにする目的で,ラット90%肝切除を行い検討した.生存率は70%肝切除群(A群,n=34)は100%に対し,90%肝切除群(B群,n=60)は72時間目で55.5%と有意の低下を認めた(p<0.05).血清GOT,総ビリルビン値はB群で有意に高く,動脈血中ケトン体比は全経過を通じB群で有意な低値を示した(p<0.05).一方,血中エンドトキシン値は24時間目にB群で一過性の上昇を示した(p<0.01).肝DNA合成能は24時間目にB群でA群に比べ有意な抑制をみた(p<0.01).しかしB群の24時間以上生存ラットは48時間目にDNA合成能のピークを示し,72時間目までその亢進は遷廷した.以上,90%肝切除ラットでは術後早期の肝細胞障害および肝再生抑制を認め,肝再生は遅延した.この肝再生抑制,遅延にはエンドトキシン値の一過性の上昇および肝エネルギー代謝障害が強く関与している可能性が示唆された.
索引用語
partial hepatectomy, liver regeneration, endotoxin, arterial ketone body ratio, DNA synthesis in the liver
日消外会誌 27: 1753-1757, 1994
別刷請求先
安藤 克彦 〒260 千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第1外科
受理年月日
1994年2月9日
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