Alpha-fetoprotein産生IIc＋IIa型早期胃癌の1例

森景　則保, 松井　則親, 守田　知明, 原田　幹彦, 兼行　俊博

厚生連周東総合病院外科

　Alpha-fetoprotein（以下，AFPと略記）産生早期胃癌の1例を経験したので報告する．症例は59歳の男性で，自覚症状はなく胃集団検診で異常を指摘され来院した．胃内視鏡・胃X線検査所見より体上部前壁のIIc＋IIa型早期胃癌と診断した．術前AFP値は53.1 ng/mlと高値であったが，他の諸検査で異常はなく噴門側胃切除を施行した．病変の大きさは1.5×1.2 cm大で，肉眼的にT₁N₀P₀H₀，surgicalstage grouping Iaであった．術前高値であったAFP値は術後には8.4 ng/mlと正常に復した．病理組織学的には中分化型管状腺癌，深達度smでリンパ節転移はなく，抗AFP抗体染色により腫瘍細胞内にAFPの局在を認めた．術後1年4か月経過した現在，AFP値の上昇なく無再発生存中である．
　以上AFP産生早期胃癌の1例を報告するとともに，自験例を含む13例の本邦報告例について臨床病理学的特徴を考察した．

索引用語
alpha-fetoprotein producing gastric cancer, early gastric cancer, alpha-fetoprotein

別刷請求先
森景　則保　〒742　柳井市大字古開作1000-1　厚生連周東総合病院外科

受理年月日
1994年2月9日

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