症例報告
先天性凝固第X因子欠乏症を伴った進行胃癌の1切除例
渡辺 透, 大村 健二, 金平 永二, 石川 紀彦, 石川 智啓, 石田 文生, 渡辺 洋宇
金沢大学第1外科
先天性凝固第X因子欠乏症に進行胃癌を併発した症例に対して凝固因子製剤の投与下に根治術を施行した症例を経験したので報告した.症例は71歳の男性で,平成4年11月,鼻腔手術施行の際に大量出血を認め,出血傾向の精査のため当院紹介となった.精査の結果凝固第X因子が45%と低下しており,先天性凝固第X因子欠乏症と診断された.翌年4月,空腹時の心窩部痛が出現,精査の結果胃前庭部に長径6 cmの2型の低分化腺癌を認めた.手術に先駆けて第X因子を含有する複合型凝固因子製剤PPSB-HTによる輸注試験を行い手術時および術後の至適投与量を決定した.手術はPPSB®,HT投与下に胃全摘,脾,横行結腸合併切除D4リンパ節郭清を行ったが,術中および術後に異常な出血はみられなかった.凝固因子欠乏症に併発した消化器癌でも止血管理を厳重に行うことで安全に根治術が行えるものと考えられた.
索引用語
factor X deficiendy, advanced gastric cancer
日消外会誌 27: 1810-1814, 1994
別刷請求先
渡辺 透 〒920 金沢市宝町13-1 金沢大学医学部第1外科
受理年月日
1994年2月9日
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