肝細胞癌切除後副腎転移の2切除例

永野　浩昭^＊, 佐々木　洋, 今岡　真義, 石川　治, 大東　弘明, 古河　洋, 岩永　剛

大阪府立成人病センター外科（^＊現・大阪大学第2外科）

　症例1は65歳の男性．Vp3の肝細胞癌症例で1983年術前TAE後，肝右葉切除および肝左葉部分切除を施行した．1984年4月残肝再発を来たしtranscatheter arterial chemoembolization（以下，TAEと略記）施行，8月再度残肝再発および左副腎転移と診断され，TAEと副腎摘出術施行，これによりAFPは正常化した．初回術後2年7か月目に消化管出血により死亡したが，AFPは正常域であった．症例2は64歳の男性，S6の肝細胞癌症例で1986年8月術前TAE施行後，肝S6部分切除施行．1987年12月右肺転移にて右肺部分切除術施行，さらに1988年10月左副腎転移にて副腎摘出術施行した．本症例は副腎摘出後6か月間無再発にて経過したが，残肺再発により，初回術後3年5か月目に死亡した．
　文献的考察の結果，原発巣の治療が十分で，他に病巣のない肝細胞癌切除後の副腎転移症例は，外科的切除により治療効果が期待できると思われた．

索引用語
metastatic adrenal tumor, hepatocellular carcinoma, adrenalectomy

別刷請求先
永野　浩昭　〒565　吹田市山田丘2-2　大阪大学医学部第2外科

受理年月日
1994年1月12日

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