肝細胞癌とその境界病変診断におけるangio-CTの有用性―硬変併存肝細胞癌手術の観点から―

初瀬　一夫, 青木　秀樹, 村山　道典, 相原　司, 坪井　賢治, 柿原　稔, 玉熊　正悦, 入江　敏之^＊, 寺畑　信太郎^＊＊

防衛医科大学校第1外科, 同　放射線科^＊, 同　中検病理^＊＊

　肝硬変の経過観察中，超音波検査あるいはCTにより腫瘤が発見されangio-CT後肝切除を施行した15症例を対象とし，angio-CTの腫瘤描出および診断能を従来の画像診断（DSA，MRI，Lp-CT）と比較検討した．対象15症例で腫瘤として23病変が検出された．肝細胞癌（HCC）14，早期肝細胞癌（eHCC）1，腺腫様過形成（AH）3，異型腺腫様過形成（AAH），再生結節1，その他3であった．2病変を有する症例が8例みられ，1例は2病変ともAH，残り7例中4例はHCCに1 cmの細小肝癌，eHCC，AAH各1病変を合併し多中心性発生を示唆した．腫瘤描出能はangio-CT 86.9％，DSA56.5％，MRI 71.4％，Lp-CT 50％であった．eHCC，AH，AAH 5例の描出能はangio-CT 80％，MRI，DSA，Lp-CTそれぞれ20％で，angio-CTはHCCの前癌状態とされるAH，ならびにeHCCを含めた腫瘤描出能が最も良好であった．以上のことから硬変合併肝細胞癌では前癌状態を含め多中心性発生がかなりみられるので，切除にあたりangio-CTによる前癌状態の腫瘤の把握が重要と考えられた.

索引用語
liver cirrhosis, hepatocellular carcinoma, nodular lesions mimicking hepatocellular carcinoma, multicentric carcinogenesis in liver cirrhosis, computed tomography during hepatic arteriography or arterioportography

別刷請求先
初瀬　一夫　〒359　所沢市並木3-2　防衛医科大学校第1外科

受理年月日
1994年3月2日

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