原著
高齢者大腸癌の外科治療について
石神 純也, 山田 一隆*, 朝沼 榎, 小代 正隆, 愛甲 孝*
鹿児島県立大島病院外科, 鹿児島大学医学部第1外科*
過去10年間に手術を行った大腸癌症例137例を70歳未満の65例(A群),70~79歳の35例(B群)および80歳以上の37例(C群)の3群に分け,高齢者大腸癌の臨床病理学的特徴を外科治療の観点から検討した.術前に併存疾患あるいは重要臓器の機能障害を認めた症例の頻度はB,C群では91.4%,89.2%で,A群よりも有意に高率であった.術後合併症の発生頻度については,C群に肺炎と術後一過性のせん妄が有意に高率でみられた.手術術式とリンパ節郭清度については,A群とB群の間に特別な差異はみられなかったが,C群では郭清度が有意に限定されていた.しかし,治癒および非治癒切除症例の累積3年生存率は,それぞれ各群間で有意の差異は認められなかった.以上より,70歳代の症例には若年者と同程度の根治手術で臨んでよいが,80歳以上の症例では高齢者に特有の術後合併症を十分に留意して慎重に手術方針を選択すべきであると考えられた.
索引用語
colorectal cancer in the elderly
日消外会誌 27: 1961-1967, 1994
別刷請求先
石神 純也 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1994年3月2日
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