原著
他臓器浸潤大腸癌症例の検討
多田 雅典, 呉 鉄仁, 謙信 正明, 椿 昌裕, 谷畑 英一, 岡部 聡, 遠藤 光夫
東京医科歯科大学第1外科
当教室における大腸癌切除例511例のうち,肉眼的に他臓器浸潤が認められた症例は68例(13.3%)であつたが,組織学的に他臓器浸潤が証明された39例(7.6%)について検討した.対照群をs.a2症例170例とし比較検討した.
他臓器浸潤症例は有意に女性に多く,組織学的には中分化腺癌が多い傾向があったが有意差はなかった.浸潤臓器は原発巣との解剖学的関係を反映し,小腸・腹壁・膀胱・女性生殖器などの頻度が高かった.合併切除術が39例中26例(66.7%)に行われ,23例(59.0%)が治癒切除となった.累積5年生存率は治癒切除症例では57.1%と良好で他臓器合併切除を含めた積極的手術が望ましいと考えられた.ただし,リンパ節転移のある症例はたとえ治癒切除術を行っても有意に予後不良であり,症例に応じてリンパ節郭清の程度や術後補助療法の要否を決定すべきと考えられた.
索引用語
colorectal cancer, extracolonic invasion, combined resection of invaded organs, 5years survival rate, lymphnode metastasis
日消外会誌 27: 1968-1973, 1994
別刷請求先
多田 雅典 〒113 文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学医学部第1外科
受理年月日
1994年4月13日
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