症例報告
腺癌と扁平上皮癌で異なる浸潤形式を示した膵腺扁平上皮癌の1例
鴨下 憲和1)2), 大和田 進2), 柳沢 昭夫3), 星野 和男1), 仲村 匡也1), 今井 昇1), 川島 吉之2), 森下 靖雄2)
今井病院1), 群馬大学第2外科2), 癌研究会癌研究所病理3)
症例は45歳の男性で,下血・貧血の精査のため入院した.上部消化管内視鏡検査では胃静脈瘤を認めたが,その原因は不明だつた.MRI検査では膵尾部に腫瘤形成がみられ,膵尾部癌が疑われた.胃静脈瘤は,癌の脾静脈浸潤が原因で側副血行が形成され,出現したものと判断された.膵尾部癌の摘出および胃静脈瘤の改善目的で開腹術を行った.術中,膵尾部に直径約3 cmの腫瘍を認めた.脾静脈は腫瘍浸潤のため脾門部で完全閉塞していた.膵体尾部・脾切除・リンパ節郭清術を施行した.病理組織検査では,腫瘤の組織型は腺扁平上皮癌であった.癌は線維性間質内を広範囲に浸潤増殖していたが,脾静脈内には扁平上皮癌成分のみの浸潤,神経周囲には腺癌成分のみの浸潤がみられ,組織型により浸潤形式が異なっていた.
索引用語
pancreatic tail adenosquamous cell carcinoma, left side portal hypertension, splenic vein thrombosis
日消外会誌 27: 2019-2023, 1994
別刷請求先
鴨下 憲和 〒371 前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部第2外科
受理年月日
1994年4月13日
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