症例報告
腸管穿通を伴った小腸腸間膜リンパ管腫の1例
服部 昌和, 森田 信人, 細川 治, 渡辺 国重, 津田 昇志
福井県立病院外科
腸管穿通を伴った空腸腸間膜リンパ管腫の1例を経験した.症例は生後1か月の女児で,嘔吐,腹部膨満を主訴に来院.腹部の超音波検査,およびCT検査にて,腸間膜嚢腫によるインウスと診断,開腹手術を施行した.Treitz靭帯より約25 cmの空腸腸間膜に嚢胞性腫瘤を認め,これにより同部の空腸が圧排・伸展されイレウス状態をきたしていた.この嚢腫を含め小腸を部分切除した.嚢腫は長径5 cm大で多房性であり,嚢腫に圧排された空腸には打ち抜き様の穿通を認めた.病理組織学的には海綿状リンパ管腫と診断され,穿通部腸管の漿膜下組織内にもリンパ管腫が存在した.腸管壁内のリンパ管腫の存在により,その部のぜい弱化を来し,腸管が穿通したものと考えられた.
小腸腸間膜リンパ管腫は新生児にはまれで,術前診断は困難なことが多いが,腹部超音波検査およびCT検査がその診断に有用であった.
索引用語
mesenteric cyst, lymphangioma of jejunal mesenterium, jejunal penetration to mesenteric cyst
日消外会誌 27: 2034-2038, 1994
別刷請求先
服部 昌和 〒910 福井市四ッ井2-8-1 福井県立病院外科
受理年月日
1994年4月13日
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