原著
回腸肛門吻合術におけるJ型回腸嚢の血行動態についての臨床的および実験的研究
藤本 佳久
兵庫医科大学第2外科(主任 宇都宮譲二教授)
潰瘍性大腸炎,家族性大腸腺腫性ポリポーシスに対し全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸嚢肛門吻合術が行われているが,われわれの用いているJ型回腸嚢は回結腸動静脈を温存することが他の回腸嚢に比べ特徴である.その利点を検討する目的で当教室において回肛吻合術を施行した19例を対象とし,術中回腸末端の粘膜血流を測定した.片側血行支配を想定した回結腸動静脈血流遮断では約20%の血流低下を認めた.また阻血および腸管内圧亢進の回腸に及ぼす影響をみる目的で雑種成犬を用い回腸分節閉塞と腸間膜動静脈結紮とを組み合わせたモデルを作製し粘膜血流測定および組織学的検討を加えた.回腸分節閉塞および血管血紮を同時に行った群では有意な血流低下と虚血性潰瘍の発生がみられた.したがって腸内容の貯留の場となる回腸嚢を作製するにあたっては特にその血行動態に十分留意する必要があると思われた.
索引用語
ileoanal anastomosis, ischemic pouchitis, hemodynamics of the pelvic J pouch
日消外会誌 27: 2229-2237, 1994
別刷請求先
藤本 佳久 〒663 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学第2外科
受理年月日
1994年6月8日
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