肝細胞癌切除例における予後ならびに再発形式からみた切除範囲とsurgical marginに関する検討

古川　一隆, 岡本　英三, 山中　若樹, 折山　毅, 田中　恒雄, 藤元　治朗, 河村　英輔, 市川　信隆, 田中　渉, 安井　智明, 安藤　達也, 黒田　暢一

兵庫医科大学第1外科

　1981年から1992年末までに経験した肝細胞癌治癒切除217例を対象として，切除範囲ならびにsurgical marginと再発様式，予後との関連を検討した．腫瘍径5 cm以下に限定した切除範囲別無再発生存率では，2区域以上切除例はそれ未満の切除例に比べ，有意（p＜0.05）に良好であった．Surgical margin（以下TW）別無再発生存率では，TW 20 mm以上の症例はそれ未満の症例に比べ，有意（p＜0.05）に良好であった．再発部位をみると原発巣の近隣再発が最も多かった．断端再発の頻度はTW10 mm未満に最も多かった．5年無再発生存例（n＝30）のうち，亜区域以下切除例は40％を占めたが，これらは腫瘍径5 cm以下単結節肝癌で生物学的悪性度が低い症例であった．肝切除術式は原則として肝機能の許容範囲で切除範囲の拡大と十分なTWの確保が必要である，単結節型で生物学的悪性度の低い肝癌は亜区域以下の小範囲切除でも長期生存が期待できる．

索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic resection, extent of resection, surgical margin, recurrence

別刷請求先
古川　一隆　〒663　兵庫県西宮市武庫川町1-1　兵庫医科大学第1外科

受理年月日
1994年7月6日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です