原著
高齢者食道癌―食道癌手術における高齢者の定義―
溝渕 俊二, 加藤 抱一, 日月 裕司, 梅村 彰尚, 森田 浩文, 渡辺 寛
国立がんセンター中央病院外科
食道癌手術における高齢者を定義するために,右開胸,開腹操作にて手術を施行した食道癌切除症例517例を5歳間隔の7群に分けて以下の項目について検討を行った.術前心電図異常は,75歳以上群において70歳未満の各群と比較して有意に高頻度に発生し(p<0.05),PSP試験では75歳を境として,スパイロメーターにおける1秒量は65歳を境としてその前後の群間で有意差を認めた(p<0.05,p<0.01).術後のPaO2の変動では70歳以上の2群に有意な低下を認め,Crnは65歳以上の3群で有意な上昇をみた.合併症では75歳以上群の肺炎,せん妄の発症頻度はそれぞれ28.6%,30.4%と他の群と比較して有意に高値を示した.合併症死は70~74歳群は12.3%,75歳以上群は17.9%であり,75歳以上群のみ70歳未満の他の年齢群と比較して有意差を認めた.以上の結果より,食道癌手術における高齢者は75歳以上と定義するのが適当であると考えられた.
索引用語
esophageal cancer in the elderly, surgery, postoperative pneumonia, postoperative delirium, postoperative atrial fibrillation
日消外会誌 27: 2376-2383, 1994
別刷請求先
溝渕 俊二 〒104 中央区築地5-1-1 国立がんセンター外科
受理年月日
1994年6月8日
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