救命しえた広範な特発性門脈系静脈血栓症の1例

田中　雄一, 花岡　農夫, 工藤　保, 李　力行, 大内　慎一郎, 土屋　玲, 進藤　吉明, 瀬戸　泰士, 鈴木　敏文^＊

中通総合病院外科, 同　放射線科^＊

　Computed tomography（CT）で術前診断しえた広範な門脈系静脈血栓症の1症例を報告した．患者は68歳の男性で，既往歴，家族歴では特記すべきことなし．主訴は腹部膨満感，腹痛，下痢で，発症後4日目に入院となった．腹部は進行性に膨隆し筋性防御を認めた．腹部単純CTで門脈，脾静脈，上腸間膜静脈から腸間膜の末梢まで広範な血栓による閉塞を認め，小腸壁は著明に肥厚していた．腹部血管造影の静脈相では門脈系静脈は造影されなかった．以上より門脈系静脈血栓症と診断し，入院当日手術を施行した．血性腹水と小腸の鬱血，壊死を認め，血栓除去と260 cmの小腸切除を施行した．術中から抗凝固療法を開始した．術後のCTと血管造影では門脈本幹から右枝は閉塞していたが，脾静脈は開存し門脈周囲に側副血行路を認めた．凝回線溶系には原因と考えられる病態はなく特発性と診断した．残存小腸は40 cmであったが，栄養補助なしで経過を観察中である．

索引用語
diffuse thrombosis of the portal system, thrombectomy, massive intestinal resection

別刷請求先
田中　雄一　〒010　秋田市南通みその町3-15　中通総合病院外科

受理年月日
1994年7月6日

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