症例報告
Hemosuccus pancreaticusと局所性門脈圧亢進症を合併した慢性膵炎の1例
飯野 弥, 白須 達也, 苅込 和宏, 長堀 薫, 藤井 秀樹, 関川 敬義, 松本 由朗, 萩原 英之*
山梨医科大学第1外科, 同 第1病理*
症例は45歳の男性.慢性膵炎,胃十二指腸潰瘍の診断で近医にて投薬治療を受けていたが,大量の吐血で当科に入院,出血性十二指腸潰瘍の診断で緊急下に幽門側胃切除術を施行した.退院後,再び心窩部痛が出現し,慢性膵炎,膵仮性嚢胞の診断で再入院となった.血液検査では汎血球減少が認められた.腹部CTにて膵仮性嚢胞,脾腫が認められ,腹部血管造影では脾動脈に動脈瘤と脾静脈の狭窄,さらに著明な側副血行路の形成が認められた.膵体尾部切除,脾合併切除術を施行した.切除標本では膵尾部に主膵管と交通する仮性嚢胞が認められ,これに脾動脈が多破していた.脾静脈も周囲の線維化により狭窄していた.
以上より,出血の原因はHemosuccus pancreaticusと考えられ,さらに局所性門脈圧亢進症も併存しており,きわめてまれな症例と思われるので文献的考察を加え報告する.
索引用語
chronic pancreatitis, hemosuccus pancreaticus, left-sided portal hypertension
日消外会誌 27: 2461-2465, 1994
別刷請求先
飯野 弥 〒409-38 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 山梨医科大学第1外科
受理年月日
1994年6月8日
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