症例報告
S状結腸間膜内ヘルニアの1例
多田 真和, 金丸 洋*, 堀江 良彰*, 小高 明雄, 村田 戒
埼玉医科大学総合医療センター第2外科, 至聖病院外科*
S状結腸間膜内ヘルニアは内ヘルニアの中でも極めてまれである.本邦においてはこれまでに瀬藤らおよび山田らによる2例の報告があるにすぎない.特徴的な所見を欠き,術前診断は非常に困難である.
症例は83歳の男性で,左下腹部痛および嘔吐を主訴に来院.腹部手術,外傷,腹痛発作などの既往もなく,絞扼性イレウスを思わせる強い臨床症状や検査所見を認めなかったため,保存的治療を行った.第9病日になってもイレウスが解除されないため,開腹手術を施行した.約10 cmの回腸がS状結腸間膜右葉に存在する欠損部から底部は後腹膜,側方はS状結腸間膜左葉で囲まれた腔内に嵌入しており,S状結腸間膜内ヘルニアによるイレウスと診断した.嵌入腸管を還納し間膜の欠損部位を縫合し手術を終了した.術後経過は良好で退院した.
索引用語
lntramesosigmoid hernia, ileus
日消外会誌 27: 2605-2608, 1994
別刷請求先
多田 真和 〒350 川越市鴨田辻道町1981 埼玉医科大学総合医療センター第2外科
受理年月日
1994年9月14日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|