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第28巻 第1号 1995年1月 [目次] [全文 ( PDF 533KB)]
症例報告

鼠径ヘルニア嚢腫瘤より発見された腹膜原発漿液性乳頭腺癌

河野 修三, 下田 忠和, 飯野 年男, 二階堂 孝, 梅田 耕明**, 桜井 健司

東京慈恵会医科大学第1外科, 同 病理学教室, 小倉病院外科**

 症例は68歳の女性.平成5年7月に左鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に来院し,大網のヘルニア嵌頓の診断にて手術を施行した.ヘルニア嚢には3×2 cmの腫瘤を認め,同部を切除した.病理検査の結果が転移性腺癌であったため,生殖器および消化器の精査を行い諸検査で異常所見を認めなかったため,腹腔鏡検査に引き続き,開腹手術を施行した.大綱には多発性散在性に瘢痕様病巣が存在したので大網網嚢切除を施行した,大網およびヘルニア嚢腫瘤の病理組織学的検査から腹膜原発漿液性乳頭腺癌と診断した.ヘルニア嚢に悪性腫瘍を発見することはまれなことである.腹膜原発の漿液性乳頭腺癌は比較的まれな疾患であるが,腹水貯留による腹部膨満感や腹部腫瘤触知により診断されることが通常である.ヘルニア嚢の腫瘤より同疾患が診断された報告はほかになく,非常に興味深い症例と考えた.

索引用語
peritoneal serous papillary adenocarcinoma, hernia-sac tumor, peritoneoscopy

日消外会誌 28: 72-76, 1995

別刷請求先
河野 修三 〒105 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学第1外科

受理年月日
1994年10月12日

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