食道癌の外科的治療―その基礎と臨床―

藤巻　雅夫

富山医科薬科大学第2外科

　食道癌に対する基礎的研究として，食道癌の培養細胞を用いた，1）温熱実験，2）抗癌剤投与実験，3）温熱化学療法実験，4）TNFと温熱との併用実験，5）TNFとΔ¹² prostaglandin J2との併用実験，6）線溶因子および線溶阻止因子の発現，7）食道癌培養細胞株の染色体解析と，8）Water in oil in water型リピオドールエマルジョンの作製などがあげられる．
　食道癌治療の臨床については，私は，これまで食道癌手術の標準術式として，再建先行術式を採用してきた．本術式では，頸部，腹部の2チームで同時に手術を開始するので，それぞれの領域のリンパ節郭清がじっくり行えるという利点がある．1985年からは，この術式の利点を生かし，症例を厳選して，両側頸部および上縦隔徹底郭清を伴う3領域拡大郭清を採用してきた．病院開院以来の食道癌切除症例は242例であり，直接死亡率は2.5％，5年生存率は21.7％であった．

索引用語
esophageal cancer, experimental study, culture of human esophageal cancer cell, hyperther-mia, esophageal reconstruction prior to esophagectomy

別刷請求先
藤巻　雅夫　〒930-01　富山市杉谷2630　富山医科薬科大学第2外科

受理年月日
1994年11月9日

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