門脈腫瘍塞栓を来したα-fetoprotein産生胃癌の1切除例

小橋　研太, 堀見　忠司, 石川　忠則, 田中　拓, 内田　悦弘^＊

高知県立中央病院外科, 内田内科消化器科^＊

　門脈本幹内に充満する腫瘍塞栓を形成したα-fetoprotein（以下，AFPと略記）産生進行胃癌の切除例を経験した．症例は，72歳の男性で胃角部から前庭部の小彎側を中心としたBorrmann 3型胃癌があり，術前血清AFP値が20,780 ng/mlと異常高値を示した．開腹所見は，胃癌取扱い規約によるとT₃，N₃，P₀，H₀，M₀，Stage IVaであった．また門脈内に硬結を認めたため門脈造影を施行したところ，上腸間膜静脈合流部から門脈本幹にわたり完全閉塞を認めた．胃全摘，腫瘍塞栓除去術および門脈内リザーバー留置を行った．組織学的検索では，肝癌類似像を示す部分を認め，免疫組織染色法（LSAB法）にて胃癌病巣，腫瘍塞栓，転移リンパ節ともAFP陽性であった．術後，5-fluorouracil，mitomycin C，cisplatinの併用化学療法を施行し，現在術後5か月で生存中である．

索引用語
portal venous tumor thrombosis of gastric carcinoma

別刷請求先
小橋　研太　〒780　高知市桜井町2丁目7-33　高知県立中央病院外科

受理年月日
1994年11月9日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です