症例報告
転移性肝癌肝切除後sodium valproateによる高アンモニア血症と昏睡をきたした1例
初瀬 一夫, 林 剛, 乾 多久夫, 青木 秀樹, 坪井 賢治, 相原 司, 玉熊 正悦
防衛医科大学校第1外科
転移性肝癌に対する肝切除後,sodium valproate(VPA)による高アンモニア血症と昏睡をきたした1例について報告する.症例は50歳の男性で既往歴として脳梗塞があり,その後抗てんかん剤としてVPAを服用していた.肝切除後の経過は良好で術後4日目から食事が始まり,ラクツロースとともにVPAも再開された.ラクツロース中止後4日目から全身倦怠感出現し,5日目には昏睡に陥った.この時点での肝機能所見および脳computed tomographyでは異常はないが,アンモニアが異常に高く,薬剤副作用による高アンモニア血症に伴う昏睡が疑われた.VPAの投与中止,ラクツロース,morihepaminの投与により2日目には意識が清明となった.アンモニアはVPAを投与していた術前より高く,投与中止中の術直後一過性に上昇した後減少し,VPAの再開とともに再上昇した.アミノ酸分析ではVPA投与時にはアルギエンの低下がみられ,昏睡はVPAおよび肝切除による尿素回路抑制の結果生じたものと考えられた.
索引用語
valproate, hepatic resection, hyperammonemia
別刷請求先
初瀬 一夫 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科
受理年月日
1994年12月7日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|