症例報告
肝持続冷却灌流法を用いた下大静脈腫瘍塞栓合併腎癌摘出術の1例
大惠 匡俊, 高林 有道, 薄井 裕治, 重城 博一, 牧 淳彦, 武内 勝美
田附興風会医学研究所北野病院外科
肝静脈流入部に及ぶ下大静脈腫瘍塞栓合併腎癌に対し部分体外循環下に肝持続冷却灌流法を用い腫瘍塞栓摘出を行った1例を報告する.手術は,(1)腫瘍塞栓により肝静脈流入部以下での血流遮断が不可能なこと,(2)下大静脈壁への腫瘍浸潤に対し下大静脈再建術が必要となる可能性があることなどから長時間の肝阻血が予想された.そのため安定した循環動態と臓器保護を重視した手術が必要と考えられ,左腎摘出後,Bio-pump®による部分体外循環を行うとともに,total vascular exclusionに対する肝保護の目的から肝持続冷却灌流法を併用し,下大静脈塞栓摘出術を行った.Bio-pum®作動時間は36分.術中ケトン体比は0.4以下の持続時間が30分であった.術後肝機能は,第1病日にGOT:255 KU,GPT:170 KUと最高値を示したが徐々に改善し,14日目には正常値に戻った.高度な下大静脈腫瘍塞栓に対し,摘出術のみならず臓器保護も考慮にいれ安全性を重視した術式の有用性が示唆された.
索引用語
tumor thrombus extending to inferior vena cava, Bio-pump®, hypothermic perfusion of the liver
別刷請求先
大惠 匡俊 〒607 京都市山科区音羽珍事町2 洛和会音羽病院
受理年月日
1994年11月9日
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