症例報告
Tissue-type plasminogen activatorによる血栓溶解療法が奏効した食道癌術後急性肺塞栓症の1例
中川 基人, 佐野 誠, 相浦 浩一, 有沢 淑人, 石井 誠一郎, 松本 賢治, 横山 勲, 納賀 克彦
川崎市立川崎病院外科
食道癌術後3日目に発症した急性肺塞栓症を緊急肺動脈造影にて診断し,recombinant tissue-type plasminogen activator(以下,rt-PA)にて治療した1例を報告する.症例は68歳の男性.ImEi,2型の食道癌に右開胸開腹胸部食道全摘,胸骨後胃管再建を施行した.術後3日目に患者は突然不穏状態となり呼吸困難を訴え,著しい低酸素血症となった.緊急肺動脈造影にて右肺動脈上葉部に陰影欠損を認め肺塞栓症と診断し,rt-PAによる血栓溶解療法を行った.治療開始5時間後には呼吸状態は著しく改善し,術後早期の血栓溶解療法であったが出血などの合併症はなかった.発症後23日目の肺動脈造影では陰影欠損は消失していた.食道癌術後の急性肺塞栓症は他の肺合併症と鑑別が困難な場合があり,肺動脈造影による確定診断と迅速な血栓溶解療法が重要である.rt-PAによる血栓溶解療法は術後急性肺塞栓症に対して有効かつ安全な治療法として期待しうるものと考えられた.
索引用語
acute pulmonary embolism, recombinant tissue-type plasminogen activator, postoperative complication after esophagectomy
別刷請求先
中川 基人 〒210 川崎市川崎区新川通り12-1 川崎市立川崎病院外科
受理年月日
1994年12月7日
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