膵頭部領域癌に対する拡大リンパ節郭清，神経叢郭清の功罪

中尾　昭公, 原田　明生, 野浪　敏明, 金子　哲也, 竹田　伸, 井上　総一郎, 細野　二郎, 野本　周嗣, 稲垣　均, 高木　弘

名古屋大学第2外科

　膵頭部領域癌切除例をリンパ節転移，神経浸潤を中心に病理組織学的に検討するとともに予後との関連，拡大郭清のQOLについても検討した．下部胆管癌（23例），乳頭部癌（28例）では胃周囲リンパ節転移はまれで，膵頭部癌（101例）では6番にのみ12％の転移を認め，リンパ節郭清の意味からは6番郭清を施行すれば胃切除の適応は少ないと考えられた．膵頭部癌においては14番に23％，16番には25％の転移を認め，13番，14番から16番への転移経路が推測され，これを一括郭清する必要が考慮された．下部胆管癌では14，16番転移はそれぞれ9％に認めたが，乳頭部癌では認めなかった．膵頭部癌ではリンパ節転移より膵外神経叢浸潤が予後と関連した．16番の広範郭清は術後早期にドレンよりの大量腹水流出を伴い術後管理上注意を要する．上腸間膜動脈周囲神経叢の郭清で14番リンパ節は完全に郭清されるが下痢を主体とした栄養不良に対する厳重な術後栄養管理が必要となる．

索引用語
cancer of pancreatic head region, lymph node metastasis, neural invasion

別刷請求先
中尾　昭公　〒466　名古屋市昭和区鶴舞町65　名古屋大学医学部第2外科

受理年月日
1994年12月7日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です