特集
胸部食道癌に対する3領域郭清の功罪
安藤 暢敏, 小澤 壮治, 辻塚 一幸, 篠崎 浩治, 池田 佳史, 上田 政和, 北島 政樹
慶應義塾大学外科
1992年までに教室で切除した3領域郭清例3Fは92例で,その遠隔成績を背景因子をそろえた2領域郭清例2F 57例と対比しつつその功と罪を整理し,その結果をもとに3領域郭清の適応を検討した.郭清リンパ節個数からみると,3Fでは頸部郭清が追加されただけでなく,縦隔郭清の密度がより濃くなっていた.全例では3F・2Fに遠隔成績の差は認められなかったが,進行度別ではstage O~III,転移リンパ節個数別では0~3個,転移領域数別では0~1領域,占居部位別ではImの症例で3Fの生存率が有意に良好であった.術後肺合併症や反回神経麻痺の発生率は2群間で大きな差はみられず,従って超進行癌を除き中期までの進行癌症例では3Fの郭清効果が期待できる.erb-Bがん遺伝子は高度リンパ節転移との強い相関がみられ,3Fの適応にはならない超進行癌を術前に予測しうる因子の1つになると考えられた.
索引用語
esophageal cancer, 3-field dissection c-erb
別刷請求先
安藤 暢敏 〒160 新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部外科
受理年月日
1994年12月7日
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