特集
胸部食道癌に対する拡大リンパ節郭清術の功罪
山名 秀明, 掛川 暉夫, 藤田 博正, 島 一郎, 藤 勇二
久留米大学第1外科
胸部食道癌根治切除301症例を対象とし,リンパ節拡大郭清の意義を予後の面を中心に検討した.リンパ節郭清範囲は,当初は食道近傍に限定されていたが,周術期管理の向上により上縦隔・頸部にも及ぶようになり,今日では3領域郭清術として頸・胸・腹部のリンパ節が系統的に郭清されるようになった.そこで,1970年から5年毎の予後をみると,年代を経るごとに術後遠隔生存率は有意に向上した.しかし,リンパ節転移個数で遠隔生存例をみると,郭清範囲にかかわりなく3個以内の症例が5年以上生存していた.一方,6~10個程度のリンパ節転移では系統的郭清によって3以上生存した症例も小数認められた.3領域郭清による合併症発生率は,反回神経麻痺のみが2領域郭清と比べて高率であったが在院死亡率などに差はみられず,数個のリンパ節転移を有する胸部食道癌では3領域郭清術が予後向上に寄与していた.
索引用語
intrathoracic esophageal carcinoma, extended radical lymphadenectomy, postoperative survival rate
別刷請求先
山名 秀明 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第1外科
受理年月日
1994年12月7日
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