大建中湯の消化管運動に対する作用と術後イレウス治療に対する有用性

古川　良幸, 志賀　由章, 羽生　信義, 橋本　慶博, 向井　英晴, 西川　勝則, 青木　照明

東京慈恵会医科大学第2外科

　大建中湯の消化管運動に対する作用およびイレウス治療に対する有用性について検討した．方法：意識下の雑種成犬4頭を用いて，大建中湯投与前後の消化管運動をstrain gauge transducer法により測定した．さらに，xylocaineにより胃粘膜を麻酔した後に同量の大建中湯を投与した．臨床的検討として，イレウスにて入院となった患者の在院日数を大建中湯投与群と非投与群で比較検討した．結果：大建中湯の投与後，胃，十二指腸，空腸および回腸の運動亢進が観察された．胃粘膜麻酔後には，これらの消化管運動亢進作用はまったく認められなかった．臨床的検討では，大建中湯投与群の在院日数は21.8±2.4日で非投与群は，27.7±2.9日で両群間に有意の差を認めた．結論：大建中湯は，粘膜刺激を介して，強い上部消化管運動亢進作用を有する．この大建中湯の薬理作用および作用機序は，臨床的にイレウス治療に対して十分応用価値があるものと考えられた．

索引用語
gastrointestinal motility, ileus treatment, Chinese herb medicine

別刷請求先
古川　良幸　〒105　港区西新橋3-25-8　東京慈恵会医科大学第2外科

受理年月日
1994年12月7日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です