原著
高齢者食道癌手術における3領域リンパ節郭清の評価と問題点
福元 俊孝, 徳田 和信, 浅谷 倫代, 相良 光久, 白尾 一定, 草野 力, 夏越 祥次, 馬場 政道, 吉中 平次, 愛甲 孝
鹿児島大学医学部第1外科
教室では1983年以降,胸部食道癌に対して積極的に3領域リンパ節郭清を施行してきた.最近,高齢者の食道癌切除症例が増加しているが,果たして高齢者に対しても3領域リンパ節郭清が有効であろうか? c1以上の切除症例251例を対象に,70歳以上の高齢者群(65例)と70歳未満の非高齢者群(186例)に分け検討した.その結果,1)術前併存症は高齢者群に有意に多かった.2)術後合併症は高齢者特有の合併症はなかったが,不整脈やせん妄が多くみられた.3)3領域郭清群に合併症が多く認められた.4)人院死亡率は両群間に差を認めなかった.5)2領域郭清例の相対5生率は両群間に差はないが,3領域郭清例では高齢者の5生率は8.0%で,非高齢者群の35.9%に比べて有意に低かった.高齢者胸部食道癌の外科治療に対しては,画一的な術式の選択よりも,臨床的に癌をとり残さないことを最低条件とした合理的なリンパ節郭清が必要である.
索引用語
aged patient, thoracic esophageal carcinoma, 3-field lymph node dissection, postoperative complication
別刷請求先
福元俊孝 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1995年1月11日
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