原著
胆嚢隆起性病変に対するtotal biopsyとしての腹腔鏡下胆嚢摘出術の意義
市原 透, 堀澤 増雅, 鈴木 夏生, 関谷 正徳, 松井 隆則, 陳 鶴洋, 片岡 政人, 宮川 拡, 小出 昭彦, 市原 周*, 坂本 純一**
国立名古屋病院外科, 同 病理*, 愛知県立愛知病院外科**
各種画像診断の進歩にもかかわらず胆嚢癌の早期診断は依然として困難である.診断の決め手のないまま胆嚢隆起性病変を経過観察するうちに進行癌に至る場合もまれではない.そこで我々は,侵襲の少ない腹腔鏡下胆嚢摘出術を診断と治療を兼ねた胆嚢の“total biopsy”として意義づけた.本法を施行した胆嚢隆起性病変24例のうち,術中迅速病理診断によりそれぞれ深達度m,pmと判定された胆嚢癌を2例(8.3%)経験した.術中胆道造影により,膵管胆道合流異常の合併が認められた深達度pm胆嚢癌では開腹に移行し,肝床部肝切除,肝外胆管切除および16番リンパ節を含むR2リンパ節郭清を追加施行した.2例ともに病理組織学的所見からみて必要かつ十分な手術であったものと考えられた.
これらの検討結果から胆嚢癌を否定しえない2 cm以下の胆嚢隆起性病変に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は不十分な摘出や過度の侵襲を避け,かつ的確な1期的手術治療を可能にするものと考えられる.
索引用語
total biopsy of gallbladder, laparoscopic cholecystectomy, gallbladder cancer, elevated lesion of the gallbladder
日消外会誌 28: 1043-1048, 1995
別刷請求先
市原 透 〒460 名古屋市中区三の丸4-1-1 国立名古屋病院外科
受理年月日
1995年2月8日
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