食道癌術後における輸液と経腸栄養を主体とした管理の有用性について

池田　健一郎, 佐藤　信博, 肥田　圭介, 目黒　英二, 上杉　憲幸, 小笠原　聡, 大塚　幸喜, 木村　祐輔, 前沢　千早^＊, 八重樫　泰法, 寺島　雅典, 岡本　和美, 石田　薫, 斎藤　和好

岩手医科大学第1外科, 国立療養所盛岡病院臨床研究部病理病態研究室^＊

　胸部食道癌手術患者38名を対象に以下の術後輸液・栄養管理を施行し，うち14名で水分電解質代謝，栄養指標を，全例で術後合併症を検討した．輸液管理：Cardiac lndexとEnd Diastolic Volume lndexを術前値以上に保つよう細胞外液組成液を中心に投与．栄養管理：末梢輸液と3病日からの経腸的栄養投与．この結果，0病日の総投与水分・Na量は5.24 ml/kg・h，0.56 mEq/kg・hで1病日以降に比べ有意に多く，水分出納は2病日に最低値を示した．総投与カロリーは9病日に30 kcal/kg・dayを超え，窒素，K出納は10，4病日に正転した．Total protein，Albumin，Rapid turnover protein，リンパ球数は3病日に最低値を，3-MeHis，C-reactive proteinは3病日に最高値を示し，14病日には回復した．術後合併症発生率は，不整脈（8％），高ビリルビン血症（11％），1次性肺合併症（11％），minor leakage（3％）だった．以上より，術後侵襲期は容量負荷による循環動態安定化を優先し，侵襲離脱後の生理的栄養投与で，簡便で安全な術後管理が施行可能と思われた．

索引用語
postoperative management for esophageal cancer, enteral nutrition, infusion therapy, postoperative complication of esophageal cancer

別刷請求先
池田健一郎　〒020　盛岡市内丸19-1　岩手医科大学第1外科

受理年月日
1995年3月8日

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