原著
逆流による食道発癌の実験的研究―胃液と十二指腸液の分離逆流―
佐原 博之
金沢大学医学部外科学第2講座(主任:宮崎逸夫教授)
胃液および十二指腸液の食道への逆流が食道発癌に及ぼす影響を明らかにするために,ウイスター系雄性ラットを用いて以下のモデルを作製した.1)DGER群;胃液と十二指腸液の混合液が逆流,2)DER群:十二指腸液のみ逆流,3)GER群:胃液のみ逆流.4)RY群:非逆流.5)SO群:単開腹.発癌剤の投与は行わずに飼育し,50週で屠殺・検索した.食道癌の発生頻度は,DGER群(n=12):83%,DER群(n=13):77%,GER群(n=16):0%,RY群(n=11):0%,SO群(n=12):0%で,十二指腸液が逆流する群でのみ,食道癌が発生した(p<0.001).食道癌23個の組織型は,腺癌が16個,腺扁平上皮癌が4個,扁平上皮癌が3個であった.発生部位は,腺癌は吻合線付近,扁平上皮癌は吻合線から離れた口側で,背景粘膜として前者はBarrett上皮,後者は逆流性食道炎がみられた.以上より,逆流性食道炎を母地とした食道発癌に十二指腸液の逆流が関与することが示唆された.
索引用語
esophagus, neoplasms, reflux esophagitis, Barrett's esophagus, duodenal juice
日消外会誌 28: 1630-1640, 1995
別刷請求先
佐原 博之 〒920 金沢市宝町13-1 金沢大学医学部第2外科
受理年月日
1995年3月8日
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