原著
消化管・胆道デュアルシンチグラフィーによる胃切除後消化管機能の検討―特に迷走神経温存の意義について―
稲田 高男, 尾形 佳郎, 尾澤 巌, 大石 卓爾*, 瀧澤 勇*
栃木県立がんセンター外科, 同 画像診断部*
胃全摘,迷走神経切離幽門側切除,迷走神経温存幽門側切除の3群間において,消化管・胆道デュアルシンチグラフィーを行い,食物と胆汁の混和状態を観察した.術後6か月における混和不良は全摘例において多い傾向であり,食物先行,胆汁排出遅延によるものであつた.胆道シンチグラフィーによる解析では,全摘群において最も胆汁の排出遅延が認められ,迷走神経温存群と切離群を比較すると温存群が最も胆道機能が保たれているものと考えられた.胃全摘群,迷走神経切離幽門側切除群における1年後の消化管・胆道デュアルシンチグラフィーの結果ではいずれも胆汁排出の改善が認められ,混和状態も改善傾向であった.したがつて,胃術後の混和不良の原因のひとつは胆道機能障害によるものであり,迷走神経温存により機能障害はある程度軽減され,全摘群,神経切離幽門側切除においても経時的に改善することが推察された.
索引用語
gastrointestinal and hepatobiliary dual scintigraphy, vagal nerve preserving distal gastrectomy, postcibal asynchrony
日消外会誌 28: 1641-1646, 1995
別刷請求先
稲田 高男 〒320 宇都宮市陽南4-9-13 栃木県立がんセンター外科
受理年月日
1995年3月8日
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