原著
ss胃癌におけるurokinase-type plasminogen activatorとtype 1 plasminogen activator inhibitorの発現―肝再発予測因子としての有用性―
冨松 聡一, 市倉 隆, 玉熊 正悦
防衛医科大学校第1外科
胃癌肝転移における組織線溶系酵素の関与につき検討した.深達度ssの胃癌根治切除例中,肝再発群14例と無再発で5年以上生存した対照群30例を比較すると,再発群の方が高齢でリンパ節転移が高度であったが,他の病理学的因子やPCNA標識率に両群間の差はみられなかった.免疫組織染色によるurokinase type plasminogen activator(u-PA)の陽性率は,肝再発群が64.3%と,対照群の40.0%より高い傾向にあり,逆にtype 1 plasminogen activator inhibitor(PAI-1)の陽性率はそれぞれ28.6%,36.7%であつた.u-PAとPAI-1とを組み合わせると,u-PA(+),PAI-1(-)の症例は肝再発群において35.7%と対照群の6.7%に比べ有意に高頻度だつた.また肝再発の有無に関する判別分析では,有用な説明変数としてu-PA,PAI-1,リンパ節転移,手術時年齢が選択され,u-PAは有意に肝再発に関わつていた.以上よりu-PAおよびPAI-1の染色性は肝再発を予測する上で有用な因子と考えられた.
索引用語
gastric cancer, liver metastasis, fibrinolytic activity, urokinase type plasminogen activator, type 1 plasminogen activator inhibitor
日消外会誌 28: 1667-1672, 1995
別刷請求先
冨松 聡一 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科
受理年月日
1995年3月8日
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