原著
肝硬変合併肝細胞癌に対する開胸開腹的肝切除術の有用性の検討
桝谷 誠三*, 佐々木 洋, 今岡 真義, 中森 正二, 亀山 雅男, 大東 弘明, 平塚 正弘, 甲 利幸, 石川 治, 古河 洋, 岩永 剛
大阪府立成人病センター外科, *現・市立堺病院外科
S7亜区域あるいはその近傍に存在する肝細胞癌の肝切除に際して,開胸開腹アプローチ法(右第7肋間開胸)の有用性を検討するために,開胸開腹アプローチ症例を開腹アプローチ(右肋骨弓下切開)症例と比較検討した.対象をA群:開胸開腹法による肝切除群(n=20),B群:開腹法による肝切除群(n=33),の2群に分類した.A群の出血量および輸血量はB群に比べ有意に少量であった(p<0.05).また縮小手術(肝部分切除術あるいは亜区域切除術)症例での腫瘍と肝切離面の距離(surgical margin)はA群1.0±0.9 cm,B群0.4±0.6 cmとA群でより広いsurgical marginが確保できた(p<0.05).手術後の回復程度は,A群の術後絶食期間,術後在院日数がそれぞれ5±1日,40±17日,B群はそれぞれ6±2日,53±23日とA群で良好であった(p<0.05).以上よりS7亜区域近傍の肝細胞癌に対する開胸開腹法は積極的に用いるべき術式と考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic resection by trans-thoracic route, liver cirrhosis
日消外会誌 28: 1693-1697, 1995
別刷請求先
佐々木 洋 〒537 大阪市東成区中道1-3-3 大阪府立成人病センター外科
受理年月日
1995年3月8日
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