症例報告
嚢胞摘出術にて根治性の得られた肝原発性cystadenocarcinomaの1例
平原 典幸, 長見 晴彦, 角 昭一郎, 仁尾 義則, 田村 勝洋
島根医科大学第1外科
肝原発性cystadenocarcinomaはまれな疾患であり,いまだ術前診断には困難があるが,今回われわれは術前に診断し,胆管と交通を有しないため嚢胞摘出術にて根治性の得られた1例を経験した.症例は66歳の女性で,肝機能障害のため精査を受けた際,肝に充実性部分を伴う多胞性病変を発見された.血管造影上,充実性部分はhypervascularで,腹腔鏡下に吸引した嚢胞内容に悪性細胞は認めなかったが,液中のCEA,CA19-9が高値であったため肝原発性cystadenocarcinomaと術前診断し,嚢胞摘出術を施行した.摘出標本は充実性腫瘤を伴った多胞性嚢胞で,被覆化され肝浸潤は認めなかった.病理組織学的には胞体内に粘液を含有した乳頭状増殖部分と,低分化で一部壊死を伴う充実性増殖部分が混地する肝原発性cystadenocarcinomaであった.本疾患は,肝細胞癌や胆管細胞癌に比べ予後良好であり,積極的な外科的切除が必要である.
索引用語
cystadenocarcinom, liver, simple resection of the cyst
日消外会誌 28: 1735-1739, 1995
別刷請求先
平原 典幸 〒693 島根県出雲市塩治町89-1 島根医科大学第1外科
受理年月日
1995年3月8日
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