穿刺吸引細胞診により腹壁にneedle tract implantationを生じた膵臓の粘液嚢胞腺癌の1例

塩田　摂成, 上田　通雅, 水田　誠, 和又　利也, 平岡　裕, 宮野　陽介, 岩井　宣健, 谷　尚

八鹿病院外科

　超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行った膵臓の粘液嚢胞腺癌においてneedle tract implantationと考えられる腹壁転移を経験した．患者は68歳の男性で，画像診断で良悪性の鑑別が困難であった膵頭部の嚢胞性病変に対して超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行い粘液嚢胞腺癌の診断を得，膵頭十二指腸切除術を施行した．1年後に超音波検査で穿刺部直下の腹壁に腫瘤陰影が発見され，その後腫瘤が増大してきたため同部の穿刺吸引細胞診を行った．粘液を背景に腺癌細胞が認められたため，腹壁転移の診断でsecond look operationを行った．腹腔内に再発所見は認められず，腫瘤は穿刺部直下の腹直筋内に限局性に存在したため，腫瘤摘出術を行った．病理組織学的には前回の粘液嚢胞腺癌と同様の乳頭状腺癌が認められ，needle tract implantationによる腹壁転移と診断した．膵臓の粘液嚢胞腺癌例に対する穿刺吸引生検においてはneedle tract implantationに対しても十分な注意が必要と思われた．

索引用語
needle tract implantation, ultrasonically guided aspiration cytology, mucinous cystadenocarcinoma of the pancreas

別刷請求先
塩田　摂成　〒667　兵庫県養父郡八鹿町八鹿1878-1　八鹿病院外科

受理年月日
1995年3月8日

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