原著
下部直腸癌に対するradical abdominopelvic lymphadenectomyの意義
山田 一隆, 丹羽 清志, 長谷 茂也, 鮫島 隆志, 有村 耕一, 中馬 豊, 木之下 藤郎, 竹林 勇二, 松下 兼裕, 石沢 隆, 愛甲 孝
鹿児島大学第1外科
下部直腸癌の根治的切除例において,拡大郭清(RAPL)144例と非拡大郭清(CONV)108例の臨床病理学的所見および予後についてretrospectiveに比較検討した.RAPLはCONV施行例に比べてより若年者で進行癌症例に採用され,両群の手術死亡率に相違はなかった.RAPL群はCONV群に比べて予後良好であったが,とくにDukes C症例で生存期間の有意の延長が認められた.また,CONV群におけるリンパ管,静脈侵襲陽性例は陰性例に比べて予後不良であったが,RAPL群では脈管侵襲の有無による予後の相違はなかった.RAPL例におけるリンパ節転移状況は,上方転移率が14.5%,側方転移率が15.3%であった.上方転移あるいは側方転移のみの症例の5年生存率はそれぞれ68.2%,43.0%であったが,上方・側方とも転移のあった症例では0%であった.以上より,RAPLはDukes Cの下部直腸癌症例において意義が認められたが,広範なリンパ節転移例では治療効果に限界があることが示された.
索引用語
lymphnode metastasis of the lower rectal cancer, radical abdominopelvic lymphadenectomy
日消外会誌 28: 1806-1813, 1995
別刷請求先
山田 一隆 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1995年4月5日
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