症例報告
膵瘻管空腸吻合術により治癒した膵頭十二指腸切除術後難治性膵液瘻の1例
塩竃 利昭, 福井 洋, 鶴長 泰隆, 水谷 明正, 朝川 孝幸, 田中 保寿
長崎記念病院外科
膵液瘻に対しては種々の治療法が試みられているが,治療に難渋することが多い.今回,膵頭十二指腸切除術後に発生した難治性膵液瘻に対して膵瘻管空腸吻合術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例は50歳の男性.中部~下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行.膵管チュープ抜去後に,膵前面に置いたドレーンから膵液の流出が認められ膵液瘻と診断された.従来の保存的療法に加えてsomatostadn療法を試みたが瘻孔の完全閉鎖は得られず,150~200 ml/日の純粋膵液の排出が持続した.瘻孔造影では正常大の膵管像が描出されたが,造影剤の空腸への排出は認められず,膵液瘻発生より50日目(膵頭十二指腸切除術後75日目)に再手術に踏み切った.手術は左傍腹直筋切開で開腹して瘻管を剥離,小腸をRoux-en Yとして膵瘻管空腸吻合術を施行した.術後経過は良好で再手術より42日目に退院し,1年4か月後の現在,元気に社会復帰している.
索引用語
pancreatic fistula, pancreatic fistulo-jejunostomy, somatostatin analogue
日消外会誌 28: 1858-1861, 1995
別刷請求先
塩竃 利昭 〒851-03 長崎市深堀町1-11-54 長崎記念病院外科
受理年月日
1995年4月5日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|