食道癌に対する胸腔鏡補助下食道切除術の経験

黒田　大介, 加藤　道男, 奥本　聡, 保田　知生, 林　道三, 山内　勝治, 村上　晴也, 野村　秀明, 西松　信一, 大柳　治正

近畿大学医学部第2外科

　食道癌手術において，手術侵襲を抑え，かつ安全に手術を行う方法として小開胸を加えた胸腔鏡補助下食道切除術を工夫し，臨床に応用し得たので報告する．症例はImに8 cm，3型の食道癌を認めた76歳の男性で，1秒率が39.3％と高度の閉塞性肺機能障害を合併していた．手術は，まず，仰臥位にて開腹，頸部操作を行い，胸骨後経路で胃管による再建を施行した．つぎに，左側臥位で右第5肋間に約10 cmの小開胸を加え，さらに右第4肋間と第6肋間に12 mmのtrocarを刺入，胸腔鏡観察下に，胸部食道を切除し，小開胸創より食道を摘出した．血液ガス所見は術前後で変化はなく，呼吸状態は安定しており，第55病日に軽快退院となった．本法は胸腔鏡の観察による拡大効果もあり，良好な視野が得られ，安全に手術が行えることから，高齢者や術前合併症を伴う食道癌の縮小手術として，また，将来は表在癌に対する根治術のひとつとしても応用できるものと考えられた．

索引用語
thoracoscopy-assisted esophagectomy, esophageal cancer

別刷請求先
黒田　大介　〒589　大阪狭山市大野東337-2　近畿大学第2外科

受理年月日
1995年5月17日

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