超音波内視鏡による早期胃癌の術前深達度診断に関する検討

浦　英樹, 伝野　隆一, 平田　公一, 鶴間　哲弘, 亀嶋　秀和, 八十島　孝博, 山口　浩史

札幌医科大学第1外科

　早期胃癌に対する局所治療の問題点について，sm微小浸潤癌の臨床病理学的特性および超音波内視鏡による術前深達度診断の精度という2つの観点から検討を加えた．過去20年間に当科で切除した早期胃癌420例の深達度別リンパ節転移率はm 0.5％，sm₁（微小浸潤）11.1％，sm₂ 20.8％，sm₃ 18.9％であり，sm₁の転移率はmょり有意に高率であった．このことからmとsm₁を臨床上同等に抜うことは危険であると考えられた．一方，超音波内視鏡による早期胃癌56例のm-sm鑑別正診率は66.1％であった．誤診例の内訳は過大診断が10例（17.9％），過小診断が9例（16.1％）であった．局所治療を行う際に最も問題となる深達度の過小診断については，9例中8例がsm₁であったことから，微小浸潤の診断における超音波内視鏡の限界がうかがわれた．以上から，術前診断精度が不十分である現状においては，局所治療の実施にはより慎重な姿勢が必要であると考えられた．

索引用語
gastric cancer, endoscopic ultrasonography of the stomach, endoscopic therapy of early gastric cancer, surgical local resection of early gastric cancer

別刷請求先
浦　英樹　〒060　札幌市中央区南1条西16丁目　札幌医科大学第1外科

受理年月日
1995年6月14日

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