食道癌手術後患者の退院後在宅経腸栄養補助の意義

北村　道彦, 阿保　七三郎, 橋本　正治, 泉　啓一, 木村　圭介, 松本　秀一

秋田大学第2外科

　食道癌患者の退院後の栄養状態の改善を目的として1989年より導入した在宅経腸栄養補助（homeenterai nutritional support：HENS）の意義について，根治術を受けた51例を対象とし検討した．HENSは42例（82％）に平均486 kcalで5.4か月間投与されていた．結果：体重は退院時のレベルで推移した．理想体重比（％IBW，入院時90％，退院時87％），健常時体重比（％UBW，入院時97％，退院時93％）も退院時のレベルを維持できた．血清総蛋白（TP），アルブミン値（Alb），総コレステロール値の回復も良好であった．一方，上腕三頭筋部皮下脂肪厚（％TSF）は約70％の例が中―高度の低下を呈した．上腕筋囲（％AMC）の低下は軽度であった．結論：退院後の体重減少が防止でき，血液検査成績も良好であったことからHENSは有用であった．TP，Alb，％AMCに比較して％TSFの低下は著しく，体脂肪を消費し体蛋白や内臓蛋白を維持するのが，食道癌患者の退院後の栄養状態の本態と考えられる．％TSFの低下を防止すべく，％IBWや％UBWを目安とする入院直後からのより積極的な栄養管理が今後の課題である．

索引用語
esophageal cancer, postoperative nutritional assessment, home enteral nutritional support

別刷請求先
北村　道彦　〒010　秋田市本道1-1-1　秋田大学医学部第2外科

受理年月日
1995年6月14日

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