副病巣，併存病変からみた多発胃癌の術式選択

孝冨士　喜久生, 掛川　暉夫, 末松　哲, 青柳　慶史朗, 児玉　一成, 武田　仁良

久留米大学第1外科

　1984年から1993年（後期）の教室の多発胃癌の頻度は9.7％で，1974年から1983年（前期）の4.7％より有意（p＜0.05）に増加した．後期の症例中多発進行癌3例を除く多発胃癌106例の副病巣は，同期間の単発早期胃癌（n＝455）に比べ，IIa型癌，分化型癌，m癌の比率が有意（p＜0.01）に高く，腫瘍長径は10 mm以下の病巣が最も多かった．術前診断率は，副病巣全体（n=106）で71.7％，微小癌巣（n＝15）で13.3％，腺腫（n＝13）で33.3％であった．同期間の残胃の癌は21例で，初回手術後10年以上経過した例が多かった．また，多発胃癌の他臓器癌合併頻度は，単発胃癌に比べて有意（p＜0.05）に高かった．
　以上，術前見落としやすい病巣は15 mm以下のm癌と腺腫であり，残胃予定部位を内視鏡により十分に観察することが重要である．また，残胃の癌，他臓器癌を念頭にいれた長期のフォローアップが必要と思われた．

索引用語
multiple gastric cancers, accompaning lesions remnant stomach cancer

別刷請求先
孝富士喜久生　〒830　久留米市旭町67　久留米大学医学部第1外科

受理年月日
1995年6月14日

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