多発胃癌における問題点と治療法の選択

鈴木　力, 畠山　勝義, 西巻　正, 藍沢　喜久雄, 武藤　一朗, 鈴木　茂, 植木　匡, 武者　信行, 桑原　史郎, 鈴木　俊繁, 曽我　淳^＊

新潟大学第1外科, 同　医療短期大学部^＊

　1961～1993年に経験した初発多発胃癌155例，369病巣を対象にその特徴と問題点につき検討した．多発胃癌の頻度は60歳代以上の高齢者を中心に前期（1980年以前）2.4％から後期（1981以降）13.7％と著増した．多発例の多くは胃内に散在する分化型癌（主病巣66.5％，副病巣86.4％）を有していた．副病巣は径10 mm以下（37.4％）の粘膜内癌（72.0％）が多く，その多くは後期症例であった．副病巣の術前診断率は前・後期で差を認めず，消化管造影46.6％，内視鏡63.0％と低率であった．治療はD2郭清をともなう胃切除を原則としたが，後期では多発表在癌症例を中心にD1，0切除，内視鏡的切除も適応を選択し施行した．全症例の累積5年生存率は67.2％であった．今後は近年増加の著しい高齢者の多発表在癌に対する縮小手術や多発粘膜内癌に対する内視鏡的治療の適応を積極的に考慮すべきであり，そのための内視鏡を中心とした術前多発病巣存在診断精度の一層の向上が課題と考えられた．

索引用語
multiple gastric cancer, prevalence of multiple gastric cancer, diagnosis of multiple gastric cancer

別刷請求先
鈴木　力　〒951　新潟市旭町通1-757　新潟大学医学部第1外科

受理年月日
1995年6月14日

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