特集
同時性多発胃癌の副癌巣診断と異時性多発胃癌の早期診断
細川 治, 津田 昇志, 渡辺 国重, 谷川 裕, 白崎 信二, 林 裕之
福井県立病院外科
1969年から93年までの同時性多発胃癌375例,異時性多発胃癌34例を検討した.同時性多発癌は早期癌の12.1%,進行癌の6.2%を占め,全体では8.9%の比率であった.38.1%の副癌巣は術前に診断されていたが,33.8%は切除標本の肉眼観察で,28.1%は病理組織学的に発見された.術前診断群と標本肉眼発見群の間で,副癌巣の肉眼型,深達度,癌巣径に差はなかったが,両群と病理組織発見群との間には有意差が認められた.術前見落とし副癌巣のうち41.4%は主癌巣より切除断端側に存在し,副癌巣の遺残を防ぐには,胃体部小彎の観察が重要と考えられた.一方,異時性多発癌の比率は初回術式が噴門側切除の場合は高く,また早期癌の割合は初回手術から間隔が短いほど高率で,術後早期から残胃粘膜の観察を開始すべきと考えられた.そして,異時性多発胃癌発生の高危険群の設定に胃癌組織中のEbstein-Barr virus(EB virus)の検索が有用であることが示唆された.
索引用語
synchronous multiple gastric cancer, metachronous gastric cancer, Ebsetin-Barr virus in gastric cancer
日消外会誌 28: 2107-2110, 1995
別刷請求先
細川 治 〒910 福井市四ツ井2-8-1 福井県立病院外科
受理年月日
1995年6月14日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|