特集
胃癌多発病巣の治療法の検討―DNA―顕微蛍光測光法による多発早期胃癌の細胞増殖動態解析をもちいて―
糸井 啓純, 山岸 久一, 中田 雅支, 上田 祐二, 園山 輝久, 声原 司*, 岡 隆宏
京都府立医科大学第2外科, 同 第1病理*
私たちの教室で治療した胃癌症例中で多発胃癌は5.6%あるが,早期胃癌の中では多発のものは8.6%を占めて近年増加傾向にある.この多発早期胃癌は単発早期胃癌と比較して高齢者に多く,隆起型,分化型(高分化腺癌)の頻度が高く,占居部位は大半が胃体部,幽門部で幽門側切除が可能であった.私たちは多発早期胃癌の悪性度評価法として,各病巣の癌細胞増殖動態を顕微測光法で解析してきた.予後良好例では各病巣のDNAプロイディ・パターンはdiploidで増殖動態は類似し,病巣間で著差を認めなかった.一方,予後不良例ではS-G2期細胞の増加,多倍体化などの進行胃癌で見られる増殖動態を示し,これらの所見は病巣間でばらつきを示した.したがって,DNAプロイディ・パターンは多発早期胃癌の悪性度の指標になりうると考えられた.また,リンパ節転移の頻度は単発例と差がなく,単発早期胃癌と同様な進行度評価を適用しうると考えられた.
索引用語
DNA-cytofluorometry, multiple early gastric cancers, ploidy pattern
日消外会誌 28: 2115-2119, 1995
別刷請求先
糸井 啓純 〒602 京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学第2外科
受理年月日
1995年6月14日
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