原著
残肝再発からみた肝細胞癌および併存する境界病変合併切除の意義と問題点
初瀬 一夫, 青木 秀樹, 坪井 賢治, 村山 道典, 乾 多久夫, 相原 司, 柿原 稔, 玉熊 正悦, 寺畑 信太郎*
防衛医科大学校第1外科, 同 中検病理*
肝細胞癌とともにangio CTで確認された併存境界病変をも合併切除した場合の1年以内の残肝再発の状態からその切除の意義ならびに問題点を検討した.対象20例で39病変が確認され,初期の高分化肝細胞癌,境界病変を含む多中心性発生を示唆する多発症例が11例(55%)にみられた.肝切除後1年以内の残肝再発は4例(20%)であった.単発例にくらべ多発例では残肝再発率が有意に高かった.多発存在部位が反対葉のため相対的非治癒切除ないしエタノール注入におわり絶対非治癒切除になった場合,残肝再発率が有意に高かった.背景肝が肝硬変では慢性肝炎にくらべ残肝再発率が高かった.残肝再発時には多発再発が多かった.以上のことから肝細胞癌では,多中心性発生が多いので,angio CTによる病変検索とそれにもとづく可及的切除により1年以内の残肝再発の減少が可能であった.一方このように切除しても残肝再発時には切除不能な多発例が多く今後の検討課題と考えられた.
索引用語
liver cirrhosis, hepatocellular carcinoma, early hepatocellular carcinoma, borderline lesions, computed tomography during hepatic arteriography and arterioportography
日消外会誌 28: 2168-2173, 1995
別刷請求先
初瀬 一夫 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科
受理年月日
1995年7月5日
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