症例報告
MRI診断が有用であった小腸間膜脂肪腫による小腸捻転の1例
伊井 徹, 安居 利晃, 伊藤 博, 森 和弘, 鎌田 徹, 秋本 龍一, 神野 正博
恵寿総合病院外科・胃腸科
小腸間膜脂肪腫により小腸捻転を生じたまれな1症例を経験した.また,本例は腹部MRIの冠状断像が術前診断に有用であったので併せて報告する.
症例は60歳の男性で,臍右側部の強い疼痛を主訴に来院した.腹部は平坦軟で臍右側部を中心に軽い圧痛を認め,検査成績では軽度の白血球増加を認めた.腹部CTで右側腹部に径8 cmの脂肪性腫瘤を認め,腹部MRIの冠状断像で腫瘤に近接し腸間膜の巻き込み集中像と腸管の渦巻き配列(whirllike pattern)を認めた.また,血管造影で上腸間膜動脈の屈曲狭窄と腸間膜血管枝の渦巻き配列(whirlpool arrangement)を認めた.以上より,小腸間膜脂肪腫による小腸捻転と診断し,捻転解除と腸間膜脂肪腫を含む小腸部分切除を施行した.術後経過は良好であり術後31日目に退院した.
腹部救急領域において,MRIはCTに比べ適応はほとんど無いとされているが,腸捻転の診断には有用であると考えられた.
索引用語
lipoma of mesentery, small bowel volvulus, whirl-like pattern on abdominal magnetic resonance imaging
日消外会誌 28: 2215-2219, 1995
別刷請求先
伊井 徹 〒920 金沢市宝町13-1 金沢大学医学部第2外科
受理年月日
1995年6月14日
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