原著
早期胃癌術後のquality of life―D1郭清例とD2郭清例の比較検討―
藤岡 嗣朗, 沢井 清司, 大原 都桂, 湊 博史, 矢田 裕一, 谷口 弘毅, 萩原 明於, 山口 俊晴, 高橋 俊雄
京都府立医科大学第1外科
早期胃癌に対する縮小手術のひとつであるD1郭清手術(69例)と,標準手術であるD2郭清手術(179例)の安全性と遠隔時のquality of life(QOL)を比較した.術前併存疾患の有症率は,D1郭清群75.3%,D2郭清群53.0%とD1郭清群のほうが有意に(p<0.001)多かった.手術時間は,D1郭清群176分,D2郭清群211分と有意に(p<0.001)D1郭清群のほうが短かった.術中出血量はD1郭清群379 g,D2郭清群462 gと有意差は認めなかった.縫合不全,イレウスなど手術に直接関係した術後合併症は,D1郭清群では全く認められなかった.遠隔時QOLのでは,Performance status,早期ダンピング症状の発生率は差を認めなかった.遠隔時のQOLを総合評価するために筆者らが考案した胃癌術後QOL評価法で比較しても差は認めなかった.したがって,早期胃癌に対するD1郭清手術は手術の安全性は向上するが,術後のQOL向上には必ずしも役立たないと考えられた.
索引用語
early gastric cancer, D1lymph node dissection, limited surgery, quality of life
日消外会誌 28: 2242-2247, 1995
別刷請求先
藤岡 嗣朗 〒602 京都市上京区河原町通り広小路上ル梶井町456 京都府立医科大学第1外科教室
受理年月日
1995年9月13日
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