原著
肝膵同時切除後の腸管吻合部創傷治癒障害に関する実験的研究
岡野 圭一, 壷内 泰二郎, 前場 隆志, 前田 肇
香川医科大学第1外科
肝膵同時切除が腸管吻合部の創傷治癒に及ぼす影響を検討する目的でラットを用い,単開腹群(control),肝切除群(Hx),膵切除群(Px),肝膵同時切除群(HPx)の4群を作成し,各群に空腸吻合を加え,吻合部の治癒過程およびその影響因子について検討を行った.その結果,HPx群において術後3,7日目の吻合部抗張力低下と7日目のHydroxyproline量低下を認めた(p<0.05,vs control).組織学的検討においても線維芽細胞の集積低下,結合織増生の低下を認め,創傷治癒の遅延傾向が示された.また,血清総蛋白の著明な低下(p<0.001)と早期の腸管吻合部への急性炎症細胞浸潤の抑制を認めた.以上の結果から肝膵同時切除後には吻合部における早期の炎症反応が抑制され,さらに血清蛋白の低下という治癒阻害因子が加わることにより,一連の創傷治癒過程が障害されていることが示唆された.
索引用語
hepatopancreatectomy, wound healing of anastomoses, anastomotic bursting pressure, neutrophil infiltration in anastomoses, serum protein depletion
別刷請求先
岡野 圭一 〒761-07 香川県木田郡三木町池戸1750-1 香川医科大学第1外科
受理年月日
1995年10月11日
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