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第29巻 第1号 1996年1月 [目次] [全文 ( PDF 510KB)]
症例報告

横行結腸癌穿通により発症した脾膿瘍の1例

大野 伯和, 宮崎 直之, 片山 直弥, 荒樋 栄宣, 嶋田 安秀, 藤盛 孝博

兵庫県立柏原病院外科, 神戸大学医学部第2病理学講座

 脾膿瘍は比較的まれな疾患であるが,今回我々は結腸癌が直接脾臓に穿通したため脾膿瘍を形成した特異な症例を経験したので報告する.症例は67歳の女性.臍周囲部痛,嘔吐を主訴に来院した.腹部X線検査にてniveauを認め,血液検査で白血球増加著明であったため腸閉塞の診断で入院.腹部超音波・CT検査で多発性脾膿瘍を認め,大腸内視鏡・注腸X線検査で横行結腸脾彎曲部に2'型腫瘍を認めた.横行結腸癌穿通による脾膿瘍および腸閉塞と診断し人工肛門造設による減圧の後,2期的に結腸部分切除・脾摘出・腹腔ドレナージ術を施行した.摘出標本において肉眼的,病理学的に横行結腸癌の脾臓への多通および脾膿瘍が確認された.また脾膿瘍の膿汁培養にて大腸菌が検出された.本症例のように結腸癌の穿通により脾膿瘍を形成した場合は手術による切除が治療の第1選択と考えられる.

索引用語
colon cancer, colonic penetration, splenic abscess

日消外会誌 29: 94-98, 1996

別刷請求先
大野 伯和 〒669-33 兵庫県氷上郡柏原町柏原5208-1 兵庫県立柏原病院外科

受理年月日
1995年9月13日

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