症例報告
鼠径ヘルニア内容から診断された虫垂原発の腹膜偽粘液腫の1例
松田 充宏, 足立 信也, 森島 勇*, 河島 孝彦*, 尾崎 梓*, 角田 博子**, 小池 直人, 深尾 立
筑波大学臨床医学系外科, きぬ医師会病院外科*, 同 放射線科料**
症例は55歳の男性.右鼠径部有痛性腫脹を主訴として来院した.右鼠径ヘルニア嵌頓の診断での徒手整復ののち,待期的に鼠径ヘルニア根治術を施行した.切除したヘルニア嚢に,ゼリー状の成分を持つ嚢胞状の腫瘤の集簇を認めた.病理組織所見から腹膜偽粘液腫と診断した.上皮細胞はなく,原発巣は不明であった.術後の画像診断から虫垂原発の腹膜偽粘液腫と診断し,回盲部切除術および腹腔内洗浄を施行した.破裂した虫垂水瘤を認めたが,ヘルニアの修復部を含め,腹腔内に異常はなかった.組織学的に虫垂粘液嚢胞腺腫と診断した.術後3年を経過したが,再発を認めていない.
鼠径ヘルニアを初発症状とした虫垂原発腹膜偽粘液腫は,日英の文献で過去に4例の報告があるのみで,極めてまれであった.鼠径ヘルニアで発症したその他の腫瘍の報告例とあわせて考察した.
索引用語
pseudomyxoma peritoni, inguinal hernia, tumor
別刷請求先
足立 信也 〒305 つくば市天王台1-1-1 筑波大学臨床医学系外科
受理年月日
1995年10月11日
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